No.3645の記事

美しい国ニッポンの表と裏

田中森一氏の『反転』を読了。迫力がありました。彼もある意味鬼検事を標榜するも、検察に絶望して下野。辣腕弁護士として「闇社会の守護神」と呼ばれて舞い上がってしまったのだ。そして石橋産業詐欺事件で逮捕。拘置所や取調室は、元検事でもさすがにビビルようだ。彼自身は自分がなぜ逮捕されたのか理解できなかったようだ。彼自身も知り得ない深い闇があり、その蠢く闇の仕掛けに彼も何時の間にか嵌められた。そして彼はついにニッポンという国を理解する。いわく

 それでもただひとつだけ、間違いなく言えることがある。個の国は、エスタブリッシュメントとアウトローの双方が見えない部分で絡み合い、動いている。彼らはどこか似ている。エスタブリッシュメントと呼ばれるトップ階層から、アウトローと呼ばれる裏社会の住人にいたるまでの付き合いのなかから、それを感じた。表と裏の社会が一体となり、ことを運ぶその現場を、この目で何度も見てきた。
 しかし、実はその深層については、私などが踏み入ることのできない、彼らだけの領域だということをかもしれない。表と裏の社会で、どんな思惑が絡み合い、何が起きているのか。そこに触れることなく、彼らと付き合ってきた。いちど足を踏み入れると抜け出せないような、暗いブラックホール。その深遠に立ち、覗き込むことはあっても、足を踏み入れることはできない。検事時代に感じた上層部や政治家からの圧力も、これと似ている。
 闇社会の守護神、特捜のエースと呼ばれてきても、しょせんその程度だったのではないか、と正直に思う。日本という国に存在する、深く真っ黒い闇がそこにある。

参考:神のご計画と"陰謀論"