No.2653の記事

Dr.Lukeの一言映画評と本日のニ冊

アップロードファイル 13KBダーウィンの悪夢』。内容についてはチネチッタの解説が秀逸だから、ちょっと引用しておきます:

 一匹の魚から連鎖的に起きた環境の変化。グローバリゼーションは何を生んだか?南北問題を問う硬派のドキュメンタリー。
 アフリカのヴィクトリア湖。かつてそこでは多様な生物が棲む「生態系の宝庫」だった。しかし半世紀ほど前に放流された外来魚ナイルパーチが、他の魚を駆逐していく。それと同時に湖畔では、ナイルパーチの一大漁業産業が発展。加工された魚は、毎日のように飛行機でヨーロッパへ運ばれていく。それは湖畔に住む人々に、大きな影響を与え始める…。
 タイトルのダーウィンは、ご存じ「進化論」の提唱者。この説により、「現存する生物は適者生存による進化の結果の産物」ということになった。つまり環境の変化に対応できないものは敗者として滅び、生き残ったものは勝利者として繁栄できる。この湖でナイルパーチが他の魚を駆逐したように。
 しかしそれをそのまま人間の世界に当てはめるとどうなるか。現在のシステムは常に「強国が弱い国を喰い殺していくことになる」という事だ。本作でも湖畔の町には貧富の差が生じ、ストリートチルドレンが増え、売春や犯罪がはびこるようになる。魚はEU、そして日本へと運ばれ、地元の人間は捨てられた残骸を食べるしかない。富は北へ吸い上げられ、公平に配分されることは決してない。永久に解決しそうもない南北問題。それがこの湖畔の町に集約されているのだ。

まさにリバータリアニズムの極地。適者生存・効率主義のダーウィン・モデルの行き着く先。生物界でも不気味な外来種が繊細な日本種を駆逐して蔓延る。これは現在「新自由主義」として蔓延している日本の将来かも知れない。おっちゃん・おばちゃんの営む温もりのある駄菓子屋的商店街が郊外の大スーパーによって駆逐される今日。個性尊重と称する価値と尺度の一元化。それによって人が窒息している。人の温もりが感じられない、無機質なショッピング光景。映画の帰りにLAZONAでショッピングをしてきたのだが、なぜか疲れる(が、実に旨いお茶漬け屋を見つけた♪それと丸善がすごい!)。「パワー・フォー・リビング」に覚える違和感もこの辺りにありそう。

アップロードファイル 13KBで、本日の一冊は先日二審でも有罪となった佐藤優氏の『国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて−』と、ついでに『獄中記』。アップロードファイル 5KB同志社大学で修士まで神学を学んだ彼が外務省にノンキャリとして入省。鈴木宗男氏を"処理"する外務省の策略によって自らも逮捕・起訴。拘置所で512日を過ごす。前者は事件の詳細を記録。後者は獄中でつけた日記。何を隠そう、この人はクリスチャンでして、獄中で哲学から神学まで幅広く学び直している。聖書の御言葉も豊富に紹介されており、実にユニークなノンフィクション。これから楽しみます。

Commented by Luke 2007年02月02日(金)23:00

どうも外務省は田中真紀子氏を排除するために鈴木宗男氏と佐藤優氏を用い、用が済むと彼らを背任罪で排除したと言う構図のようです。

今晩のNHKスペシャルで、日本史教科書では逆臣だった曽我入鹿が実は唐から宮廷を守っていた忠臣であるとの説を紹介していた。大化の改新のために中大兄皇子と中臣鎌足が曽我氏を打ったと言うのが定説であるが、実は逆。むしろ保守路線的クーデターだったようだ。

その後中大兄皇子は無策なままに唐と対峙し、白村江の戦いで負け、結局は曽我氏の路線に戻り、対唐政策として曽我暗殺後16年で中央集権的律令国家にせざるを得なかったようだ。要するに日本書紀には脚色があるわけ。

曽我氏と言えば悪の権現。例の忠臣蔵の吉良みたいなイメージだったが(吉良はその領地では名君なのだ)、実はもっとも日本の事を考えていたのだ。何だか鈴木宗男氏と佐藤優氏と重なった。彼らは対真紀子戦略の中で奈落に落とされたのだが、もしかすると今の柳沢氏も同じかも知れない・・・かな?げに女人は恐し。