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キリスト教と聖書の謀略

と言うややトンデモ系の書物がわが書棚に眠っておりました。著者はモーリス・シャトラン。その筋ではけっこう有名。1909年フランス生まれ。パリ大学で数学と物理を修め、NASAでアポロ計画に参加した後、UFOや宇宙考古学、古代文明などを研究しているそうです。

この人は何とイエスの子孫と言われるメロビング家の血統を引くそうで、幼児洗礼を受けたものの、やはりキリスト教につまづいて異教徒となり、キリスト教(カトリック)の血塗られた歴史を暴いております。前には積読だったようで、今回パラパラと見たところ、何とダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』のいわば原作と言うか、ネタ本みたいな書。

コンスタンチンによって認められた正統キリスト教がグノーシス派を異端として虐殺し、トマス福音書など(例のユダの福音書もだろう)を隠蔽した。しかし真の福音書はグノーシス文書、例えばナグ・ハマディ写本などとして残された。これをバチカンは隠蔽するために数々の陰謀を企てている。メロビング家は、同書ではイエスの子孫ではなく、何とユダヤ人のベニヤミンの子孫であると言っています。シオン団やテンプル騎士団、さらに映画の最後の場面に出てきたレンヌ・ル・シャトー(その司祭の名がソニエールで、映画のルーブル館長の名の元)における秘密文書の発見など・・・。

何だよ、映画とほとんど同じじゃん(若者言葉がつい・・・^^)。映画が異なるのはイエスがマグダラと結婚し、その子がメロビング家の祖先と言うところだけ。つまりダン・ブラウンはこういったオカルト的西洋史のネタを継ぎ接ぎして、ミステリーを創作したのだ。これは『文藝春秋』も指摘するとおり。コワイのはこういったヴァーチャルがリアルと簡単に混同されてしまうこと。これはかなりヤバイ兆候だ。ちなみにグノーシス主義の文化人類学的考察は救世軍の山谷氏のBlogを参照されたい。実に面白い論考です。

まあ、こういった神話とか伝承などの深層心理構造は精神病理学的にも共通するもの、つまり原型があるわけ。ユングはこれを集合的無意識などと呼んでいますが(彼自身もけっこうトンデモ系ですが)、これが各地の宗教として現れるのですね。だから例えばユダヤ宗教と神道に共通性が見られたからといって、一部の人たちが興奮するように、日本文化はユダヤ人によって作られたとは結論できないのです。これ自体もかなりトンデモ系と思って接近した方がよいでしょう。もし真実だとしても、私たちの信仰の本質に関わるものではありません。

今後もこの手の「面白いお話」は手を変え品を変えて現れては消えすることでありましょう。クリスチャンとても振り回されるでしょう。しかし永遠に不変なのは神の言葉。やはりここに留まることだけですね。

・草は枯れ、花はしぼむ。だが、私たちの神のことばは永遠に立つ。
・それは、私たちがもはや、子どもではなくて、人の悪巧みや、人を欺く悪賢い策略により、教えの風に吹き回されたり、波にもてあそばれたりすることがなく・・・

Commented by Luke 2006年05月22日(月)23:22

ご紹介がてら・・・

・かつてのわが同僚の意見です(信仰はない人です)→副島の学問道場(http://www.snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi

あと書棚から出てきた本を2冊ほど:

・ロラン・エディゴフェル著:薔薇十字団、文庫クセジュ、白水社
・ポール・ノードン著:フリーメーソン、文庫クセジュ、白水社

Commented by Luke 2006年05月23日(火)12:46

訂正:シャトランの本でもイエスとマグダラは夫婦らしいと言っていました。