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Dr.Lukeの一言映画評

アップロードファイル 64KB午前はいつもどおりプールとサウナ。午後は映画―山田洋二監督、木村拓哉主演の『武士の一分』。

時は太平の世、田舎の30石扶持の下級武士にして毒見役の三村が日々の無意味なお勤めで人生の空転に飽き飽きしている。つまらない会話で時間をつぶしつつ、来る日も来る日も毒見を続けるが、ある日、不運にも赤粒貝が当たって失明する。最愛の妻が上司に身を売って30石を守るも、夫にばれる。彼は妻を離縁し復讐を誓う。実際は上司の口利きによらなかったことが分かると、果し合いを申し込む。かくして盲目侍が「武士の一分」のために命をかける。彼の師の言葉、「共に死するをもって真となす。必死、是即ち生きるなり」と。かくしてその太刀裁きは相手の腕を切り落とす。そして分かれたふたりは・・・。

と言うわけで、スジは単純であるが、小生的にはかなり好きなプロット。『葉隠れ』にいわく、「武士道とは死ぬことと見つけたり」に通じるものがある。今日閉塞したこの世と教界において、膨大なるエネルギーの空転が起きているが、まさに幕末の空気と同じ。木村拓哉が扮する下級侍が「武士の一分」に目覚め、命をかける時の変貌振りがなかなか。抑えた演技がけっこう光った。しかもその卑劣な上司にとどめを刺すことなくサラッと去るわけだが、実際この手合いにはとどめは不要。自ら滅する。

一見時代劇だが、現代をするどく描き出しているいぶし銀的に光る一作。サラッとカタルシスを味わいたい方にお薦めです。