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古典の魅力

三国志。横山光輝の漫画ヴァージョンですが、何と60巻あった!同僚の漢文の先生(中国語もペラペラの方)に聞いたところ、入門用としてはグッドだと。1年くらいは楽しめるかな・・・。これでイメージができたら、吉川英治あたりに、そしてハードボイルドタッチの北方謙三あたりに行こうかと考えている。

漢文は引き締まってカッコイイので高校時代結構好きだった。また漢文の影響を受けた作品を多く残した中島敦の『山月記』も好きだった。

隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった・・・

と始まり、虎に身を窶して後、友人に会い、

人間であった時、己は努めて人との交を避けた。人々は己を倨傲だ、尊大だといった。実は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。・・・我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。

己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。

と告白する。当時、自分の心を見透かされているようで実に怖かったが、一方でこの文章を声を出して読んでいると、何とも言えない甘美な味わいがあった。そう一種のナルシシズムの世界。

それから10年後主に出会うことができたが、主に出会っていなかったらおそらくこのままを実演していたことであろう。