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仮想社会

今週号のカバーストーリーは安部氏だった。同氏の国粋主義的スタンスを論じていた。彼は懸命に「美しいニッポン」の形を作り、ニッポンのアイデンティティを確固たるものにしようとしている。

また本日の『日経』に小学生が教師に暴力を当たり前に振るい、そのひとりの「英雄的行為」によりクラス全体が盛り上がって学級崩壊を起こしていると言う記事があった。教員も殴られる一方で、手が出せないのだ(児童の人権により体罰はただちに懲戒解雇の理由となる)。

さらに『週刊文春』に精神分析学者の岸田秀氏が「天皇制は希薄なアイデンティティの日本人の共同幻想を維持するためのシステムである」として、日本国の維持のためには(良し悪しは別として)天皇制が必要であると述べていた。この3つの話題、実は根っこは同じなのだ。

昨今、若者が他人を見下す傾向が強いことが指摘されている。客観的な根拠は何もない。これを「仮想的優越感」と言う。これは若者ばかりでなく、ネットなどでも、言いたいことが言え、書きたいことが書けるため、ある種の幻想的全能感を抱く。かくしてネット上にはきわめて多事争論、リッパな「論客」が多いわけ。

こういった行為は他者を貶めて自分の価値を上げ底しようとする心理機制であり、境界性や妄想性人格障害などの人々などでは特に顕著に見られる。これらの人々の特徴はある種の幻想(あるいは妄想)的世界に生きており、リアルの世界では、実はきわめて自己充溢感(アイデンティティ)が希薄なことである。

自分に真の意味での実質・自信・満足・喜びがない者ほど、仮想空間では根拠のない自我の肥大化を起こす。このような人々が集まることにより、前にも書いたミームを共有し、互いの共同幻想を膨らませ、空虚に肥大化した自我をさらに肥大化させていく。まさに精神病理的なバブル現象と化す。

現在のニッポンの社会で、またそれを上回ってニッポンキリスト教界で起きていることは、実にコレなのである。精神病理的バブル、霊的バブル、共同幻想の肥大化。先の宮内氏の指摘される崩壊の兆候は確かに見えている。

Commented by 宮内 学 URL2006年09月18日(月)13:51

友人に「君のことが掲示板で話題に上がっている」と教えられ、こちらにたどりつきました。
精神医学的な観点からのご指摘は、非常に勉強になります。と同時に、ある種のキリスト教には反対されつつも、キリストへの信仰に満ちていることに共感します。
ご迷惑でなければ、Lukeさんの日記にリンクを張りたいのですが、よろしいでしょうか?

Commented by Luke 2006年09月18日(月)17:07

あ、これははじめまして。いつもBlogを拝見しております。格調高い文章と幅の広い内容で感銘を受けております。こちらこそよろしくどうぞ。