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存在の薄い自己の病理

以前にも書いたが、現代は自己の病理の時代。元々埋没型アイデンティティの日本人は他者の関係性の中でのみ、自己を維持し得る。ここで自己と他者の境界線が曖昧になるわけ。このようなアイデンティティにおいてケータイやネットが入ると、それらをチャネルとしてのみ関係性を確認するようになる。これがニッポン人のケータイ文化。

アップロードファイル 5KB同じ事を『他人を許せないサル-IT世間につながれた現代人-』において正高氏が述べていた。ケータイの技術はフィンランドで開発され、フィンランドが最も普及率が高いらしいが、日本とはまるで違った様相を呈しているとか。そのライフスタイルはケータイ普及前と後ではまったく変わっていない。正高氏はこれは日本人とフィンランド人の精神構造の違いにあると指摘する。このITを通して世間と通じるニッポン人の精神構造として、「自分は特別」、「IT引きこもり」、「自分が損している」といった歪んだ自己意識があると指摘する。ちなみに本書でも日本人はサル的であり、サルに鏡を見せる実験を紹介していたのが面白かった。

アップロードファイル 2KBまた『他人を見下す若者たち-自分以外はバカの時代-』において、速水氏は「仮想的有能感」がキーワードであるとし、それは「他者軽視感」と比例すると指摘する。実際、「2ちゃんねる」あたりに書き込みする者ほど、根拠のない「全能感」を抱いていると言う調査報告をしている。現代の若者(ばかりではないのがヤバイのだが・・・)のパーソナリティのディメンジョンとして、「仮想的有能感(他者軽視感)」のx軸と「自尊感情」のy軸を取って、4つの象限に分類する場合、

アップロードファイル 8KB@x>0、y>0の象限は「全能型」であり、自己の能力を過信して、他者に対する優越感を覚えるタイプ。

Ax<0、y>0の象限は「自尊型」で、他者の存在を認めつつ、正当な自尊心を持つタイプ、

Bx<0、y<0の象限は「萎縮型」で、自尊心欠如にして、他者につぶされそうに感じるタイプ、

Cx>0,y<0の象限は「仮想型」で、正常な自尊心を持ち得ず、しかし他者を貶めることで自分を確認するタイプ、

となる。

元々自他の分化がない乳児では泣けばミルクをもらえると言う「ナルチシズム的全能感」の満ちた仮想的世界に生きている(これを「1次過程」と言う)。成長するにつれ、人間はこのような全能感を喪失し、他者との区別の中で自分を確立していく(「2次過程」)。つまり「全能感」は幼児性の特質であり、成長とは何が可能で何が不可能かの見極めをなすこと、つまり「全能感」の喪失と言える。しかし「2ちゃんねる」あたりのキャラを観察していると、このCの象限に属する者が多いと感じられる。

彼らは知性はほどほど高いが、情緒が未熟と言うか、何か傷ついている部分を感じるのだ。この実現されなかった自己を、現在の自我に統合することができず、疎外したままでいる。この疎外された自己が疼く何らかの刺激を受けると、昨日述べた粘着が始まり、他者を貶めることで仮想的満足を得つつ仮想的全能感を味わう。しかも本人も自分のしている事が虚しいことを知っているのだが、止めることはできないか、あえてしない。加えて疎外された自己は、ある意味で「被害者」なので、その自己の主張はすべて正当化され、良心の痛みを覚えない。これがために罵詈雑言何でもありの無法地帯の様相を呈する。

しかしその批判の内容は他者との正常な関係性においてではなく、その本人の中における空回り的葛藤に起因する。すなわち客観的にはその対象が言ってもいないのに、自分の中で疎外された自己から生じる「内容」に対して憤り、批判を加え、貶める。つまり昨日指摘したように、他者を貶めているようだが、実は鏡に映った自分を相手にしているだけの自作自演となる。よって双方向の対話は成立しないし、まともな発言に対しては「イタイ発言」と無視し、結局は「言った者勝ち」の様相となる。

彼らの精神病理的特徴は、自分に甘く他人に厳しく、努力せず成果を求め、すぐにいらつきキレる、無気力と欝に陥り易く、謝ることをしない、とまとめられる。このような自我構造は現代の特徴であり、ITにつながれることによって、仮想的共同体において、集合無意識的に共有される。実際、特殊用語を用いつつ「2ちゃねらー」と称する一種の仲間意識を生み出す。すべてをおちゃらかす管理人ひろゆき氏なる人物の病理が、ITを媒体として広く仮想空間で共有されているのだ。

かくしてこの現象の根底にあるのはきわめて存在感の薄く、強迫的に「何か」を騒ぎ立てていないと消えてしまう様な自我なのだ。内面の空虚さに比例して、表現は過激になり、他者を貶めることによって補償的に仮想的全能感を持つようになる。人は自己像に従って他者をも扱うもの。何とも虚しく、あまりにも虚しい時代の病理ではある。なお、大脳生理学的にはこちらをどうぞ。

というわけで、良心が麻痺した者が跋扈する「2ちゃんねる」なるものが蔓延るならば日本は滅びの道を歩むと感じられる方は、こちらをぜひバックアップしてあげて下さい。貴重な情報が満載のBlogです。大規模な組織的攻撃も受けるようですね。

2ちゃんねるから子供たちを守ろう

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