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Dr.Lukeの一言映画評

午前はいつもどおりプールとサウナ。最近はサウナで過ごす方が長くなっているか・・・。午後は映画。

アップロードファイル 3KBクリント・イーストウッドの『硫黄島からの手紙』。前の『父親たちの星条旗』との二部作。前作では硫黄島は単なる政治ショーのネタに過ぎなかったわけだが、今回は絶望的なサバイバルの舞台。

同じ戦争物を日本人の俳優を使って撮るにしても、やはり何かが違う。ライフルや爆弾の音からして、本当に怖いのだ。これは韓国の『ブラザーフッド』もそうだったが、現場を知っている人が作るからだろうか。日本のはドンパチと『ウルトラマン』に毛が生えたモノと言うか、『西部警察』のノリになってしまう。今話題の中村獅童も出ていたが、昨年の戦艦大和とは違う不恰好な役回りだったが、かえって現実感を醸していた。それにしても謙さんはハリウッド俳優として貫禄が増したが、ジャニーズの二宮和也がイイ役を演じていたのには感心した。私ももし硫黄島に送られたら、どんなに無様を晒しても生き残ることを考えるだろう。

ほとんど白黒に近い画面からリアリティの重さがやけに迫ってきて、現場の火薬や血や汗の臭いまで分かるような映像で、かなり疲れた。そして何と言う虚無感。栗林中将はアメリカ生活も経験し、ヒューマニストかつ民主的にして、兵士と同じ食事を取るも、公私の区別がつく合理主義者の側面を持っていたと、『文藝春秋』今月号にあった。玉砕を禁じ、1日でも硫黄島を守ることに徹し、5日で終わると予想していた戦いが1ヶ月以上に及んだ。2万名以上の日本兵は最後に千人ほどになっていたと言う。それにしても虚しい。最後まで戦い抜いて自決する兵士たちの最後の叫びが「天皇陛下万歳!」なのだが、本音はやはり家族にあったわけだ。かくして栗林中将が絶望の淵で家族に書き送った手紙は8ヶ月間で41通だった(『文藝春秋』記事による)。

イーストウッドはかつて『ローハイド』だったか、単なる二枚目俳優、そのうち『ダーティーハリー』で汚れ役を演じて、『マジソン郡の橋』でメルリ・ストリープとオトナの恋愛を・・・と言う具合に、歳を経るに連れて円熟と言うか、渋みと言うか、顔のシワにも味が出て来ている。例によってスピルバーグも『プライベート・ライアン』式に隠し味として控えているわけだが、やっぱり映画はハリウッドにはかなわないことを再確認した。これもやや虚しいが。

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