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ホムンクルスは何処に?

出勤途上、Penny女史を成田まで送る。英国のグラスゴーでテロリストによる爆破事件があったことを伝えると、空港の警備強化を予想して、WOOPSと。英国では現在、モスレムと英国社会の鬩ぎ合いが激化しているとか。私もかつてブリテン島を一周した時、レンタカーをロンドンのエッジウェアストリートで借り出したのだが、この通りの店はほとんどがモスレムだった。

アップロードファイル 13KB昨日のテレビでの映画。あの謙さんの『明日の記憶』。若年性AD(アルツハイマー)で人格が崩壊する恐怖に直面する50代のサラリーマンとその家族を巡るドラマ。これはかなり身につまされました。何しろ短期記憶がメッキリ・・・。とにかく忘れないように記録しておかなくてはならない。昔はメモなどはほとんど不要だったのだが。

痴呆(認知症)には大きく分けて、ADとVaD(脳血管性痴呆)があるが(最近レビ小体痴呆も注目されているが)、ADはニューロンが繊維化し、脱落することによって、脳が萎縮して起きる。アルミニウムが関係しているとかも言われていたが、原因と治療はほとんど不明。脳の萎縮で人格が変化するのだから、脳こそが「私」の実体とも結論できる。しかし逆は必ずしも真ではなく、脳の変性が見られずとも人格が壊れている人はいくらでもいる。「私」が大脳を用いていることは明らかであるが、「私」の実体が脳ではあるとは言えない。

最近テレビでよく見るクオリアの追求者茂木健一郎氏(彼は東大の物理を出て、同法学部を出て、また物理の大学院を出たと言う異色の人物。けっこうオタクと見えるが、問題意識はかなり重なっている)もこのあたりについて、『脳内現象』で書いているが、彼は脳内現象のすべてを見渡している「小さな神の視点」を導入する必要性を訴えている。昔から、脳の中にいる小人(ホムンクルス)の問題が論じられたが(まあ、マジンガーZに乗って操縦する兜甲児みたいなものだ)、それは無限後退性(兜甲児は誰が操縦しているわけ・・・?)のジレンマに陥るために、サイエンスからは拒絶されてきた。

しかし彼はあえてこれを復活させようとしている。確かに主観的経験的には、頭の中で前後右左と活発に動いている「私」の存在を感知することができるわけで、ホムンクルスが「私」の実体とも言えなくもない。でもADで脳は変性したとして、果たしてホムンクルスは一体どこに行ってしまうのだろうか。かくして死以外にも「私」が消失することがあり得るわけで、これは確かに恐怖であろう。コンタクトレンズを装着しつつ、本を読むときには+ジオプトリの眼鏡をかけざるを得ない私としては、実に、実に、身に迫る次第。