お薦めの一書



●本書の著者紹介から:

著者は1953年生まれ。科学ジャーナリスト。「ツァイト」紙や「フランクフルター・アルゲマイネ」紙、科学雑誌「ビルト・デア・ヴィッセンシャフト」などに寄稿。その活動に対し、ドイツ心理学会から科学出版賞を受賞。


●本書のカバー紹介から:

アダルト・チルドレン、買い物依存症、燃え尽き症候群・・・心の不調を感じたら専門家のカウンセリングを受けるのが常識と言われる。しかし、その常識、ちょっと待っていただきたい。あなたは"心理学業界"の術中に陥ってはないか。「心理療法はあまじない以上の効き目はない」と喝破し、"業界"から目の敵にされた著者の問題の書。


●Dr.ルークの書評:

いや、待ってました!著者は"心理学業界"のいかがわしさを見事に喝破し、昨今の何でもかんでも診断名をつける業界のあり方が商売と結び付いていることを見抜いている。
「精神障害の原因は幼児期に体験したトラウマにある」というフロイトの理論は、心理療法にとって潜在的に有害な遺産となった。このような解釈に従えば、患者は『自分ではどうしようもない、自分は犠牲者なのだから』という態度を取ってよいことになる。場合によっては患者は何年間も憤懣と悪意に満ちた生活を送ることになる。一方治療者の方は「考古学者」と化して、埋もれていた悲劇を発掘しようとする。たとえ、過去を掘り返した挙句に何も見つからなかったとしても、親達は罪の意識にさいなまれ、あるいは、こどもたちをあらゆるフラストレーションから守ることに汲々とすることになる(本書pp.61-62)。
こうして"患者"さんはその診断名に甘え、延々と過去の探索に明け暮れ、家族も消耗し、医原性の悲劇を再生産することになる。昨今の自己愛に満ちた病んだ母性の中で、やたらと診断名をほしがる"患者"諸氏よ、よくよくその実態を知るべきですぞ。

心理業界では診断名をもらって安心する"患者"さんが多いのです。そしてそれを水戸黄門の印籠ヨロシク、「わたしはACだから、わたしはインナーチャイルドが・・・」として悲劇の主人公なる自分の中に逃げ込み、現在の自分の責任を回避しているのが、今日の多くの"患者"さんたちの在り方です。

また一方において、
他人の「精神障害」を治す立場にありながら、自分自身がそれを抱えている治療者が多いことは業界の公然の秘密である・・・かのフロイトですら、晩年は厭世的になり、ついには、「精神分析者は患者を正常の域へ導こうとしているが、彼ら自身の人格がそれに達していないことは明らかだ」(フロイト自身の言葉)と考えるに至った(本書p.64)
とあるとおり、しばしば"治療者"が"患者"の不幸によって自分の不幸を慰めるために"治療"する場面があるのです。

ニッポンキリスト教でもこの世の後追いをして、おろかにも、TAだとか、「セルフイメージの改善」だとか、「来談者中心カウンセリング」だとか、もっともらしいものが流行していますが、本書はそんな昨今の流れにガツンと鉄槌を振り下ろすことでしょう。

キリストの十字架以上のものは存在しないのです!!!






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