第6回 本日、会社をお休みします


1.妻がブッ倒れた

7月9日の早朝、ベッドの中で妻の涼子が必死に叫ぶ声が聞こえました。「パパー、助けて。世界がぐるぐる回っているー、起きられない。」それなのに、「起きなくて良いから、寝ていなさい。」と、さっさと仕事に出かける準備をする私。体調を崩す者が悪いと言った気持ちをあらわにして、妻のそばに駆け寄って具合を聞く様子すら示さない。そして出かける準備が整った私と娘の二人は「行って来まーす」と、玄関の戸を開けました。

我が家では毎朝、私と雅葉が出かけるのを妻の涼子が愛犬シルクを抱いて見送ることが習慣になっています。シルクが玄関で「行ってらっしゃい」とばかりに、ワンワン吠え、妻もいつものように立ち上がろうとしたようなのですが、よろよろと倒れ込んで吐いてしまいました。「救急車を呼んで!」と妻の叫ぶ声。同じような症状で倒れ救急車を呼んで助かった友人の話や痴呆症の妻を介護するため退職した先輩のことが一瞬のうちに頭の中を過ぎって「このまま、妻を車椅子に乗せた伝道者になるのか。」と、思ったりしました。


2.迷惑な早朝の救急車

朝の7時の住宅街に、サイレンを鳴らした救急車が到着すると大変なことになります。出勤前の隣人が大勢集まってきました。妻は着の身着のままの姿、私はスーツ姿で身を固め、なんともアンバランスな光景で救急病院に向かいました。

9時頃、涼子の発作がようやく落ち着き、小休止。取り急ぎ、私は会社と牧師に連絡を入れました。牧師から「教会の皆さんに連絡してお祈りしていただきましょう。」と言われたのに、「朝っぱらから大騒動になって、迷惑になるよ。」と、世間体を気にするサタンの誘惑にまんまと引っかかりました。

病院でイエスさまにお祈りしながらも、今日キャンセルした仕事のことが気になり始める不信仰さ。そして、出がけに娘が言った、「以前のパパだったら、ママに『頑張れ』とだけ言って、病院ではなく会社に行っていたね。」の言葉も妙に心に残っていました。

涼子の頭のCTスキャンを終え、脳に異常がないことが分かり一安心。それでも入院しなければならず、点滴が始まりました。


3.あなたをいやす者

妻の発作が収まり、三日後にはかなり元気を取り戻すと、「可愛いパジャマが欲しい。」「病院食は美味しくない。」「愛犬シルクに会いたい。」「お風呂に入りたい。」といった具合に、わがままが出始めます。

妻が主治医の先生に退院を申し出ると、「もう少し。次の大安の日にしますか。」との答。「すぐお願いします。」と、クリスチャンには大安なんて関係ないといった精一杯のあかしをしていました。

一方、私には、「インターネットを通じて祈ってもらいましょう。」と友人からの連絡が入りました。ようやくこの時、世間体といったサタンの誘惑から解放されて、即座に「お願いします。」と、答えることができました。

その翌日、皆さんの祈りに支えられて本人の強い希望通り退院することができました。「必ずいやされる。祈りは聞かれる。」という確信をいただきました。ハレルヤ!

もし、あなたがあなたの神、主の声に確かに聞き従い、主が正しいと見られることを行ない、またその命令に耳を傾け、そのおきてをことごとく守るなら、わたしはエジプトに下したような病気を何一つあなたの上に下さない。わたしは主、あなたをいやす者である(出エジプト15・26)



【最後の隣人】

金森涼子作

ベッドの上で年を重ね、ハッピーバースデー。
生涯忘れられない想い出。
病室で、沢山の患者さんを見るに付け、
この世の無常を見る思い。
沢山の医療機器にお世話になって、
その時巡り会う医師と看護婦さん。
この世の最後の隣人。
天国に行くときには、何も持っていけない。
その通りだと実感し、みことばを味わった。
信仰生活の喜びと苦しさを噛みしめる涼子。
いつも切れそうで切れない信仰の糸、愛の糸。
また一つ大人になった女の姿がここにある。


(金森涼子は7月19日47才の誕生日を病院で迎えました)



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